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【HQ】ANARCHY【R18】

第10章 >>8 お気に入りな件



「んー…そんなに警戒しなくても。気軽に覚って呼んでくれれば良いのに。」

むすっとしながらこちらを見つめる目。
蛇みたいだと、思った。

『警戒すんなって、無理ありすぎ。』

自分でも根に持つタイプだと思う。
非常に厄介な性格だとも自覚してる。
だから、こうやって、先ほどあんな事があったばかりの奴と歩くのすら億劫なのだ。

『大体、何で僕なんかに…。』

言う途中、言葉は何かに持っていかれた。
唇に触れる、冷たい感覚。
目線に広がる、彼の顔。
ふわりと香る、甘い煙草の香り。
丸い目と合う。

『っ…!!』

途端に消えた。蜃気楼の様に。
周りの音も、周りの人も、消えたのだ。
そんな錯覚。

「ちゃんさあ、女の子なんだから僕って言うのやめよーよ。」

ね?と腰を撫でられた瞬間、消えてた音や人が現れた。
足が砕かれた様に力が入らなくなって、ぐらりと視界が揺れる。
酒はもうとっくに抜けた筈なのに。
キスされてから、自分の中の何かが揺れていた。
こんな感覚、嫌いだ。
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