第10章 >>8 お気に入りな件
面白くもなんとも無い、寧ろ不快感が出るお笑い番組。
それが延々と流れる年末のテレビを見続けてる感覚が、1番近いかもしれない。
右手にひんやりとした手がある。
行き交う人は、皆思ったであろう。
こいつらはどういう関係なのだと。
「真っ赤なおっはなのォー、ちゃんはー♪」
上機嫌に歌う彼と、手を繋いで歩いてるのだ。
誰が想像出来ただろうか。
こんな状況を。
「ねーねー、ちゃん、さっきはごめんねっ!」
テヘッと、何とも不気味な笑みを浮かべ繋いだ手をぎゅっと握られる。
気にしないように、平然を装って、街中に流れるクリスマスソングに耳を傾け、鬱陶しい程光り輝くイルミネーションに意識を向けた。
「無視とか酷いっ!覚って呼んでよ!さ と りって!」
途端に足を止め、ぎゅーぎゅーと繋いだ手を引っ張られる。
何だこの駄々っ子。
『勘弁してくんない?』
唯でさえ目立つあなたと、こんな時間でも人通りの多い所を歩いてんだから。
その言葉は言わず、代わりに大きな溜息を吐いた。