第9章 >>7 唐突な件
『っ…わかったんなら。』
「帰せないよ?」
日向の声が、耳に響く。
まだ聞きたい事が山ほどあるんだからと言いたげな視線は、この場の誰より怖かった。
正しく、日照り雨。
表情は先ほどと変わりなく、ただ存在そのものがガラリと一瞬で変わる。
そんな感じである。
「でも、この扱いは無いだろ。」
パッと結束バンドがハサミで切られると、その跡を撫でられる。
優しいその手つきに、酷く安堵した。
「またそうやって優しくするー!」
「天童さん、落ち着いて。」
影山がなだめると、つまんないとそっぽを向いてしまう。
『僕、か…帰りたいんだけど。』
駄目元でもう一度呟く。
ぐっすり眠りたいし、お風呂も入りたい。
何より、自分が最も安心できるあの部屋に早く戻って、全部忘れたかった。
「とりあえず、違ったんだし良いんじゃないのか?」
岩泉がまた助け舟をこちらに出してくれる。
何とも優しい奴なのだな、この街に本当に似つかわしく無い。
でも、その一瞬でも岩泉の優しさに甘えたくなった。
「じゃあ、俺が送ってく!どうせ家もわれてんだし!」
天童がニコニコとそう提案すると、他の皆は何とも苦虫を噛み潰した様な顔をした。
それよりも、自宅がバレてるのがショックだった。
「いや…この状況でお前は無いだろう…。」
呆れた様に言い放つ岩泉の言葉に、天童以外は皆うんうんと同意の頷きをした。