第2章 出会い
そんなことが続いたある休日。
私が路地に足を運ぶと、そこには先客がいた。
紫色のつなぎを着た男性……まさか、この人が。
私は思わず後ずさった。
そんな気配を感じ取ったのか、男性が振り向く。
髪の毛がボサボサで、半目しか開いていない。
いかにも不審者だ。
だが、彼は思いのほか静かな声で言った。
「ここの猫たちは被害に遭ってないみたいですね。よかった」
「……」
「あなたが、猫にメシ食わせてやってるんでしょ」
「あ……はい。家では…飼えなくて」
「うん。俺の家でも、全員は無理」
男性は寂しそうに笑った。
「本当はみんな助けてあげたいけど。物理的に限りがあって、助けてあげられなかった」
彼が、痛々しい形で命を奪われた猫のことを指しているのがわかった。
「被害に遭ってないかどうかを確認することしかできない」
そうつぶやくと、彼はしゃがみこんだ。
ポケットから猫じゃらしを出し、1匹の猫と遊び始める。
どうやら、猫をいたぶる犯人ではないようだ。
私は大きく息をつく。
路地にいた他の猫が私に気づき、ねだるように身体をすりつけてくる。
よくわからないままに、私はキャットフードを出した。
これが私と彼――私の猫との出会いだった。