第7章 大好きなともだち【日向ヒナタ】
外はリエちゃんの言うとおり、ポカポカ陽気のいい天気だった。
「そういえば名前言ってなかったね。私、空風リエ」
「わ、私は……日向ヒナタ…」
お弁当を広げながら自己紹介。
自己紹介は苦手だ。
”日向”の名前を出すと、皆顔色が変わるから。
でもリエちゃんは「よろしくね、ヒナタちゃん」とにっこり笑っただけだった。
「ふふ。私ね、ヒナタちゃんとお話してみたかったんだ。ヒナタちゃんいつも一人で隅の方にいるから、もしかしたら一人が好きなのかなって思ってたけど、思い切って声かけてよかった」
「え?」
「最初ヒナタちゃん見たときにね、すごく可愛い子だなぁって思ってね、気になってたの。笑ったらもっと可愛いんだろうなぁって。あ、こんなこと言ったらヒナタちゃんに一目ぼれしちゃった男の子みたいかな」
冗談めかしてクスクス笑うリエちゃんだったけど、私の顔は赤くなっていたと思う。
大人達が遣うお世辞、おべっかというものなら何度も言われているけど、こんなに真っ直ぐ心に響いて来た言葉は初めてだった。
リエちゃんがアカデミーの皆と馴染めなくていつも浮かない顔だった自分をずっと気に掛けてくれてたことが、とても嬉しかった。
「さ、食べよ~。ヒナタちゃんハンバーグ好き?ミコトさんのハンバーグ美味しいんだよ」
「…ミコトさん?」
お母さんのことを名前で呼ぶのか、それとも家政婦さんでもいるのかと思った。
そのときは、リエちゃんの両親がもう亡くなっているなんて知らなかったから。
「お世話になってるお家のお母さんだよ。すごく優しくて綺麗で、お料理上手なの」
リエちゃんのお弁当は本当に彩りよく飾られていて、見ているだけでも美味しそうだった。
「ヒナタちゃんもよかったら、この美味しさを味わってみて!」
はい、と私のお弁当箱にハンバーグをひとつ乗せてくれたリエちゃん。
せっかくだからとそれを頂くと、自然に「美味しい」と言葉が漏れた。
リエちゃんは自分が褒められたみたいな満足そうな笑顔で、自分のお弁当を食べ始める。
その顔がとても幸せそうでクスリと笑うと、リエちゃんは私の顔を見て嬉しそうに笑って言った。
「ヒナタちゃん、やっぱり笑った方が可愛いよ」