第7章 大好きなともだち【日向ヒナタ】
「…ごめんね。ヒナタ」
泣き腫らした目で、リエちゃんは言った。
「ごめん…これからも心配かけちゃうだろうけど…でも、待っていてほしいの」
どういう意味だと問いたかったけど、これ以上リエちゃんに負担をかけたくなくて。
大丈夫、待つよと返すだけに留めた。
「えっ…リエちゃんが?!」
シカマルくんからリエちゃんが里を出て行ったと聞いて、驚きを隠せなかった。
あのときの言葉が、そういう意味だとは思わなかった。
「まぁそう心配すんな。あいつは必ず帰ってくるって。あいつの帰るべき場所は、ここだからな」
それと、とシカマルくんはポケットから取り出した鍵を私に渡した。
「リエから預かった。大事な親友のお前に、持っていてもらいたいんだと。帰ったら最初に会いに行く約束、らしいぜ」
手に伝わる鍵の温度は冷たくて。
けれどリエちゃんの優しさが温かくて。
涙が出た。
「確かに渡したからな」と言って去っていくシカマルくんの背中を見つめて思う。
そうだね、シカマルくん。
リエちゃんはこの里が大好きだから。
だから私は、いつリエちゃんが帰ってきてもいいように、この里を守っていくよ。
そしてリエちゃんが帰って来たときに、笑顔で迎えてあげるんだ。
ずっと待っているよ、リエちゃん。
私は木ノ葉の里で待っているから。
リエちゃんは独りなんかじゃないよ。
私だけじゃない。
リエちゃんのことが大好きな人が、この里にはたくさんいるんだよ。
だから、絶対に帰って来てね。
リエちゃんが旅立ったその日の空は、雲ひとつなく晴れていた。
リエちゃんと友達になった、あの日のように。