第6章 心をこめて花束を【うちはイタチ】
しばらくしてから家に帰ると、灯のともった玄関からいい匂いが香って来た。
これは、ご馳走が期待出来そうだ。
「兄さんおかえりなさい!」
ただいま、と声をかけるとサスケが駆けて迎えに出てくれた。
おかえり〜と台所からかけてきた声は、リエと母さんだ。
「いい匂いだな。夕飯が楽しみだ」
「あ…兄さん、先お風呂入ってきなよ!」
「風呂?」
帰って早々サスケから風呂を勧められるとは。
サスケの慌てようを見ると、まだ夕飯が出来上がっていないのだろう。
川原で二人を見かけてからかなり時間を潰したつもりだったが、もっと余裕を持たせて待機所を出るべきだったか。
「……そうだな、ゆっくり疲れでもとってこよう」
今日はほとんど疲れてはいないが。
しかしそう返すと、あからさまにサスケがホッとしたので返答としては合っていたようだ。
「うん!ゆっくり!ゆっくりしてきてね!」
「サスケ急いで!」
「わかってるよ!」
なんて小さな二人の小さな声が風呂に向かうときに聞こえてきた。
母さんがいるのに料理だけでここまで手間取るとも考え難い。
他に何かをやっているのか?
…いや、それは後の楽しみにしておこう。
俺は、いつもより熱めの湯に浸かりながら、のんびりと時間を過ごすことにした。