第6章 心をこめて花束を【うちはイタチ】
「リエ、早くしないと兄さん帰って来ちゃうよ!」
「ごめーん、今行く!」
任務は何事もなく終わり、いつもよりだいぶ早い帰り道
川原の方からサスケとリエの声が聞こえてきた。
俺は姿を見せない方が良いだろうと、気配を消して二人の様子を伺うことにする。
サスケが両手に買い物袋を提げていることから、今から帰って夕飯の準備をするところのようだ。
そのサスケに駆け寄るリエの手には、小さな袋がひとつ。
いったいこんなところで何をしていたのだろうか?
「ごめんね、全部可愛くて迷っちゃった」
「だからって時間かかりすぎだよ。兄さんの帰り、遅くならないと思うってリエが言ったんだろ」
「うん、早く帰って準備しなきゃね!サスケ、半分持つよ」
そうリエがサスケの持つ買い物袋をひとつ指す。
「え、いいよ!オレ一人で持てるし!」
「でも両方だと重いでしょ?結構買ったもん」
「だから、大丈夫だよ!リエよりオレのが全然力あるし!」
袋を持ち直して歩き出したサスケの歩調は、いつもよりだいぶ遅くて
リエの前ではどうあっても格好つけたいのだろうとはわかっていても、意地っ張りで見栄張りなサスケが微笑ましい。
「……じゃぁ少しだけ、手伝わせて」
そんなサスケに対して、リエはサスケが右手に持っていた袋の片方の持ち手を持って、にっこり笑った。
そうされてしまうと、サスケも何も言えないようだ。
同じ袋を二人で持って歩調を合わせて歩くのは、急いでいる彼らにとって効率は良くないはずだけれど
肩を並べて仲良く一緒に帰る二人の姿は、とても嬉しそうで、楽しそうだった。
「……もうしばらく、待機所にでもいるか」
そう呟いた俺の口元も、自然と笑みが浮かんでいた。