第5章 優しい月【うちはサスケ】
しかしオレの心配をよそに
表情を変えたオレを見て、リエはいつものように笑った。
「私なら平気だよ。気にしない気にしない」
それより早く顔洗ってきなよと促すリエを、思わずぎゅっと抱きしめた。
「…悪い…本当に…ごめん、オレ……」
何の加減もなく刃物を投げ、殴ったりもしたのだ。
服で隠れているところにもきっと傷がある。
痣だって、あんなに青くなっていて痛くないわけがないのに。
平気なわけがないのに。
なんでそうやって、なんでもない顔が出来るのだろう。
「本当に大丈夫だから、もう謝らないで。こんなの大したことないし、私丈夫な方だからすぐ治るよ」
でも、と口にしたオレの唇に人差し指を当て、リエはオレの謝罪の言葉を制した。
「サスケ、今胸痛いよね?じゃぁ、これで痛みわけにしよ」
ね?と笑う彼女に、何も出来ない自分が腹立たしい。
オレはいつもリエに救われている。
オレは、リエを傷付けているというのに。