第5章 優しい月【うちはサスケ】
あまり覚えていないが、悪夢を見るとたいていオレは暴れているようで
毎朝、気付いたら部屋がぐちゃぐちゃになっている。
一度、朝訪ねてきたリエにひどい有様の部屋を見られて、すごく心配された。
そのときは
「探し物が見つからなくて、ひっくり返して探してたんだ」
なんて嘘をついたら、素直なリエはそれを信じてくれたけど
なんだかすごく、申し訳ない気持ちになった。
だからまず、起きたら一番に部屋の片付けをするのが最近の習慣だ。
心配かけたくなくて
弱い部分を見せたくなくて
どんなに苦しくても、リエには何事もないように振る舞っていた。
でも今朝は、目覚めると部屋は綺麗に片付いていた。
破れた障子には簡易的に補強がしてある。
悪夢にうなされることはなかったが、昨日も暴れたような気がするのに。
……オレ、無意識に片付けたのか?
久しぶりによく眠れたはずなのに、なんだかスッキリしない。
昨夜、何があったんだっけ…?
「あ、おはようサスケ。今お味噌汁温めるね」
ベッドから降りて台所に向かうと、リエが笑顔で出迎えてくれた。
………リエ?
どうしてリエがもういるのだろう?
いつもは、今より一時間は遅く家を訪ねてくるのに。
しかももう朝食が出来上がっているということは、かなり早くに来ていたということだ。
いつも遠慮して、勝手に家に上がってきたことなどないのに、なんで今日は……
いるはずのないリエの姿を見てそう思ったのだが、そんな疑問は一秒後にはどうでもよくなった。
彼女の身体に出来た多数の治療跡や痣に気付いたから。
瞬時に昨日自分がしたことを思い出して、血の気が引いた。
パニック状態になっていてあまり覚えていないが、
物を投げつけクナイで攻撃した上、殴ったような気もする…。
リエだと思っていなかったとはいえ、許されることではない!
「リエ……」
どう謝ればいい?
謝って済むことではない。
わかっている、けれど……
リエにまで見捨てられたら……オレは…!