第5章 優しい月【うちはサスケ】
「……サスケ?どうしたの?!」
背後でドアを開ける音と共に、誰かがオレの名を呼んだ。
心臓が跳ね上がる。
アイツが今度はオレを殺しに来たんじゃないかと
アイツをこのままにしておけないと
そんな恐怖と怒りに頭が支配されていて
思わず、その声の主に近くにあったクナイを投げつけていた。
「っ…!サスケ、落ち着いて!」
「来るなぁっ!!」
目の前が真っ暗で
目の前にいるのが誰かもわからなくて
ただ、恐くてーーー
何度もオレの名前を呼び続けながら近づいてくる
”誰か”への攻撃の手を
休めることは出来なかった。
「…っ…はっ……っっ」
急に立っていられないほど苦しくなって、膝をつく。
上手く呼吸が出来ない。
まるで、息の仕方を忘れてしまったかのように。
「サスケ」
優しく穏やかな声に、少し恐怖心が取り除かれた。
「大丈夫だから。ゆっくり深呼吸して」
握られた手はとても温かくて。
言われた通りにゆっくりと肺に息を入れ、それを大きく吐き出す。
それを何度か繰り返すと、苦しみから解放された。
目の前の人物の柔らかい腕で抱きしめられると、途端に落ち着いた。
「ごめんね、サスケ。サスケの気持ちわかってたはずなのに、どうしたらいいかわからなくて…何も出来なくて、ごめんなさい」
そう言うと、”彼女”は優しく微笑んだ。
「これからは、私がずっとサスケの傍にいる。だから、安心して。サスケは独りじゃないよ」
そんな言葉を聞きながら頭を撫でられていたら、その温もりが気持ち良くて
あんなに取り乱していたはずなのにすごく落ち着いて
暗示にかかったように
オレは久しぶりに、深い眠りについた。
悪夢は、見なかった。