第4章 銀狐と少女【はたけカカシ】
頭を撫でていたら、いつの間にか少女は眠っていた。
安心しきった寝顔を見て、少し複雑な気持ちになる。
彼女の頭に置いていた手を離すのをなんとなく躊躇ってしまった自分に、驚きを覚えた。
調子が狂う。
……なんで、こんなにこの子のことばかり考えているんだ、俺は。
子供など煩わしいと思っていたのに。
いくら空風上忍の娘だからって、俺には関係のない子なのに。
いつものように誰も寄せ付けない態度で、ただ淡々と任務を遂行すればいいだけなのに。
闇に生き心を殺してきた俺の、固まっていた表情筋が弛んでくるのが自分でわかるほど
彼女の笑顔に、存在に、癒されている。
……いつぶりだろう、こんな気持ちは。
父親に大事に育てられ
血の匂いや死の恐怖どころか、なんの穢れも知らない少女。
戦争が終わった今、俺達が守るべきは
彼女のような笑顔なのだろうな…
などと、くさいことを思った。
俺らしくないけれど。
もしかしたら
俺に左眼をくれたあいつが目指したのも
こんな笑顔が溢れる世界だったのかもしれない。
ーーー見えるか?オビト……
心の中でそう問うと、応えるように左眼が疼いたような気がした。