第4章 銀狐と少女【はたけカカシ】
「ごめんなさい、お茶もいれずに…」
とりあえず少女を布団に寝かせて俺は少し離れた床に座ると、おもむろに少女はそう言った。
……何を言ってるんだ、この子は。
熱でふらふらだったくせに。
人に気を遣う年齢でもないだろう。
「俺はお前の看病を依頼されただけだ。客ではない」
「…いらい?にんむ、なの?」
「そうだ。お前はおとなしく寝ていろ。余計な気遣いは迷惑だ」
変に踏み込まれたくなくてそう言ったのだが、キツイ言い方だっただろうか?
父親があんなだから、冷たくされるのにも慣れていないかもしれない。
子供の相手はよくわからない。
もし泣かれでもしたら、どうすればいいのだろう?
「里のみんなをまもるおしごとって、かんびょうまでしてくれるんだ!やさしいです。やっぱりにんじゃってすごいです」
「……は?」
思いがけない言葉につい低い声が出た。
「おとうさんがいってました。
にんじゃは、里をまもるのがおしごとなんだよって。いらいをうけて、こまってる人を、だいすきな人を、たすけてあげるんだよって。
わたしも、おとうさんみたいな、すごいにんじゃになるのが”ゆめ”なんです。
お外でしゅぎょうしてたら、さむくてかぜひいちゃったけど」
さっきまでの俺の心配はなんだったんだ。
阿呆らしい。俺の話も聞いてないし。
これだから子供は…
「おとうさん、あんまりおうちにいられないから、ちょっとだけふあんでしたけど…でも、きつねさんがきてくれたおかげで、わたし今さみしくないから。にんむでも、うれしいです。
きてくれてありがとうございます」
熱でボウっとしているせいもあるのだろう、彼女はそう言うと赤い顔でふにゃりと笑った。
………。
さっきもそうだったけど
本当に、なんなんだこの子は。
悪意の欠片もないのか?
こっちの方が、毒気を抜かれてしまう。