第4章 銀狐と少女【はたけカカシ】
予想通り満面の笑みで
「カカシに特別任務じゃ!」
と言ってきた三代目から渋々依頼を引き受けて、俺は空風上忍の家へとやって来た。
誰にも見つからないように、こっそりと。
なんとなく気恥ずかしさもあって、暗部の面も付けて来た。
俺が子守とか。
自分でも想像がつかない。
木の上で様子を伺っていると、窓の向こうで空風上忍が布団に寝ている少女に話しかけているのが見えた。
「リエ、ごめんな。仕事が終わったらすぐ帰って来るから!ちゃんとお薬飲んで、ゆっくり寝てるんだよ!」
「…うん…いってらっしゃい…」
頬をピンク色に染めて怠そうにしながらも、少女…空風上忍の娘はにっこりと笑っている。
あんなに幼くてしかも体調の悪いときに、ひとり親の父が留守にするのは心細いだろうに、しっかりした娘だ。
「うん……あのな、もうすぐ父さんの友達がリエの看病に来てくれるから、遠慮なく頼りなさい!
無愛想だけど器用な奴だから、なんでもやってくれるぞ!」
空風上忍はわざわざ姿を隠している俺に向けて、読みやすいようにゆっくりと、わかりやすく、そう口にした。
俺に気付いているとは思っていたが…
…このときばかりは読唇術に長けていることを恨んだ。
空風上忍は家を出ると、頼んだぞとばかりに俺に頷いてから、脱兎の如く任務へ向かった。
上位任務といえど、あの調子ならそう長く留守にはしないだろう。
……これは任務だ。仕方ない。
覚悟を決めて、俺はそっと空風上忍の家へ上がった。