第3章 オレの好きな人【うちはサスケ】
「…ごめんね、せっかく綺麗だって言ってくれたのに…。短いの……きらい?」
オレが黙っているから怒っているか、はたまた残念がっていると思ったのか、リエは眉を下げてそう言った。
いつだったか、太陽の光を浴びてキラキラと光っていたリエの長い髪を見て
綺麗だ、と本音が口に出たことがあった。
独り言のように呟いただけなのに、そのときのリエは嬉しそうに笑って
「切ろうかと思ったけど、やっぱり髪伸ばすね」
って言ってたっけ。
アカデミーの奴にしつこく好みのタイプを聞かれて、リエを思い浮かべて「髪は長い方がいい」と答えたこともあった。
違う。
髪が長いからリエを好きになったんじゃない。
お前だから、好きになったんだ。
……なんて、思っていても言えなくて
「いや、短いのもいいんじゃないか」
とか、つまらない返事をしてしまった。
「よかった」とリエは笑ったけど…
情けねぇ。
理由が何であろうと、リエがあんなにも隠したがっていることを根掘り葉掘り聞いて困らせたくない。
そう思って、それ以上そのことには触れなかった。
リエはオレの言いたくないことを無理矢理聞き出そうとしたことはない。
だから、オレがそれをやるのはフェアじゃない気がしたんだ。
オレは納得出来ないが、リエがそれでいいなら仕方ないと思った。
でも、その日リエはずっと元気がなくて
声をかければ笑顔を返してくれるけど、オレが好きないつもの笑顔じゃなかった。