第2章 わたしの好きな人【山中いの】
ここまでサスケくんの怒りを買って、やっと彼女達も自分達の失言に気づいたのか、冷や汗を流しサスケくんの顔色を窺っている。
「…そうやって…ずっと傷つけてきたのか」
ガッとそのうちの一人の胸倉を掴むと壁に押し付け、その喉元にクナイを当てたサスケくん。
他の女子達は突然の出来事に悲鳴を上げている。
…吃驚して、危うく私も声をあげそうになった。
「今まであいつに何をした?どれだけ泣かせた?」
「わっ…私達は…な、なにも……」
「そんな嘘が通ると本気で思ってんのか!あ?!」
恐怖で泣きじゃくる彼女たちを鋭い声で黙らせると、サスケくんは目を細めて震える女子達に言った。
「リエにしたように、今ここでテメェらの髪の毛切ってやろうか?
……それとも、このクナイで喉元かっ切ってやろうか」
ヒッと声にならない声を上げ、壁に押し付けられた女子はさらに涙を流す。
「そういうのが楽しいんだろ?お前らは」
クナイを持つ手に力を入れるサスケくんに、
彼女達はまるでそれしか言葉を知らないように、涙を零しながらただ「ごめんなさい」と何度も謝り続けた。
「オレに謝ったところで何になる?
リエならお前らみたいなのも恨むことはないんだろうけどな、仮にリエが許してもオレは絶対にお前らを許さない。
髪はこれから伸びても、あいつに残された心の傷はそう簡単には消えねぇんだよ!」
掴んでいた彼女を地面に叩きつけ、サスケくんは汚いものでも見るように三人を見下ろすと
「二度とリエに近寄るんじゃねぇ。もちろん、オレにもだ」
そう吐き捨てて、その場を去っていった。