第2章 わたしの好きな人【山中いの】
休憩時間になって、リエがイルカ先生に呼ばれて教室から出て行くのを見届けてから、サスケくんは例の女子三人組に話しかけて外へ出て行った。
初めてサスケくんから声を掛けられて相当嬉しかったのか、彼女達は頬を染めながらきゃぁきゃぁと騒いで彼の後を追っていく。
まずいと思った。
これも直感だけど。
私、悪い予感も結構当たるのよね。
今のサスケくんなら彼女達を殺してしまってもおかしくない。
そう思えるほど、サスケくんからは怒りが溢れていた。
サクラに勘付かれると面倒だから気付かれないようにこっそりと、私はサスケくん達の後を追った。
サスケくんが来たのは、昨日リエが苛められていた校舎裏だった。
何を言われると期待しているのか、サスケくんを目の前にして頬を染める女子三人組。
彼女達ドキドキしてるでしょうね。
私もよ。
……全然違う意味でね。
「お前らだな」
ここに来るまでずっと黙っていたサスケくんの第一声は、地の底から出たような低い声だった。
「お前らがリエの髪を切ったんだな?」
正直、信じられなかった。
あの場にいて平然としている彼女達の神経が。
私はサスケくんの殺気が怖くて、足がすくんでしまったと言うのに。
「な、なに言ってるのサスケくん!違うよ~なんで私たちがそんなことしなきゃいけないの?」
「空風さん自分で切ったって、さっきそんなこと言ってたじゃない」
「そうよ。どうしてそんなこと聞くの?」
サスケくんは黙ったままだった。
目つきが、いつも以上に鋭くなっている。
「もしかして空風さん、私達に髪切られたとか言ってサスケくんに泣きついたわけ?」
「やだ信じられな〜い!私達のせいにするなんて、マジ最悪じゃん」
「空風さんって分身の術もろくに出来ないくせに、嘘つくのは上手なんだね〜」
彼女たちの心無い言葉が飛び交う。
…リエはこんな言葉のナイフに耐えていたの?
嘘吐きで信じられないのはあんた達の方でしょ!
飛び出していけない分鬱憤もたまって、胸が痛くなった。
彼女達の言葉を受けて、サスケくんの殺気がどんどん増していってる。
それは、遠くから覗いている私でも、その場から逃げ出してしまいたいくらいの凄みがあった。