第2章 わたしの好きな人【山中いの】
翌日、アカデミーに来て早々驚いた。
いつも冷静で、ほとんど感情を表に出さないサスケくんが、怒りの感情をむき出しにしていたから。
声をかけるのを誰もが躊躇う空気の中、サスケくんは一番後ろの席で目を光らせていた。
「リエちゃん、その髪どうしたんだってばよ?!」
「えっと…急に、短くしたくなっちゃって…に、似合わないかな?」
「そんなことないってばよ!長いのも可愛かったけど短くても可愛いってば!」
「…ありがとう、ナルトくん」
そんなナルトとリエの会話が聞こえてきた。
まぁ言い訳なんてそれくらいしかないだろうけど、嘘がスムーズじゃないのよねリエは…。
と、そこへリエを苛めていた例の女子が三人、彼女の前にやってきた。
「空風さん、どーしたの~その髪!」
「もしかして失恋でもしたのかしら?」
「でも短い髪の方が似合ってるよー」
意地悪な笑みで話しかけちゃって
本当に、馬鹿な子達だ。
サスケくんのあの射殺すような目と殺気に気づかないなんて。
あのサスケくんがリエのあんな下手な嘘、見抜けないわけがない。
あれで信じるのなんて、ナルトくらいしかいないわよ。
サスケくん、リエの髪は誰かに無理矢理切られたんだって気付いて怒ってる、絶対。
そう考えたとき、ふと思った。
昨日リエが言っていたごまかしたい相手って、他の誰でもない、サスケくんだったんじゃないかって。
リエに絡む女子を見て、勘のいいサスケくんは気付いたようだ。
彼女達がリエを傷つけたのだと。
そのときちょうど先生が来て皆席に着いたけど、サスケくんだけは授業中もずっと眉間に皺を寄せていた。