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青い果実 番外編 【NARUTO】

第2章 わたしの好きな人【山中いの】



でも次の瞬間、そんな考えは吹き飛んだ。

「……でも、どうしよう」

困ったように笑いながら、リエは言った。

「これじゃぁ…なんてごまかせばいいかわかんないや…」


リエは私に少しでも心配をかけないように笑っているだけなのだと、私はようやく気付いた。

女の命ともいえる髪をこんなに切られて、辛くないわけがないのに。

笑ってる人が何されても傷付いてないなんて、そんなことあるわけないじゃない。

……馬鹿だ、私。


「いのちゃん、もし出来たら髪整えてくれないかな?…このままじゃさすがに、帰れないから」

「…うん、私でいいなら」

私が肯定の言葉を返すと、リエはニコリと笑って私に背を向けた。



リエ、私知ってるよ。

リエは確かに忍術は全然出来ないけど、手裏剣術や体術は優れてるってこと。

あいつらなんかに囲まれたって、やり返そうと思えばリエなら出来ただろうってことも。

それでもあいつらに何もしなかったのは
きっとリエが優しすぎるからなんだろうね。


でも…ダメだよ。
やっちゃいけないことは、ちゃんとダメだって言わなきゃ。

傷つくのは彼女達じゃない。

あんたなんだから…。



クナイでリエの髪を整えている間
僅かに震える肩や、時々聞こえる鼻をすする音に、私は気付いていた。

でも、知らないフリをした。


リエは一言も喋らなかった。

私も……思っていることはたくさんあったけど、何も言えなかった。


サクサクという髪を切る音だけが、耳に届いていた。






「ありがとういのちゃん。綺麗にしてくれて」

結局、肩につかないくらいの長さになってしまった髪を見て、リエは「これも悪くないね」と、また笑った。

「ううん。…ごめん、リエ……私、もっと早く止められていたら…」

「いのちゃんは何もわるくないじゃない。心配してくれてありがとう。
…ひとつだけお願い。今日のことは…内緒にしてね」



そう言って帰っていくリエの後ろ姿を、私はずっと見ていた。

その姿が見えなくなっても、
なぜか、私の足はなかなか動かなかった。
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