第2章 わたしの好きな人【山中いの】
リエをいじめている女子達は、いつも私とサクラがサスケくんにアタックしているときに遠巻きに睨みつけている三人だ。
私はくノ一で一番成績がいいし、サクラは頭がすごくいい。…そこだけは認めてるのよ。
敵にまわすと厄介な私達には何もしないで、おとなしいリエにこんなことするなんて、
なんて卑劣な奴らなのだろうと思った。
言いたいことがあるなら正々堂々と皆の前で言いなさいよね。
私、こういう陰湿なこと大っ嫌い!
…けど、アカデミー内でリエとサスケくんが一緒にいるところはあまり見ない。
いきなりリエを責め立てる理由もないとは思ったけど、
先日のあの買い物帰りであろう二人を彼女達も見たのかもしれないと思うと、なんとなく合点がいった。
だからって、こんなことをしてもいい理由には絶対にならないけれど。
「そういえばサスケくん、長い髪の女の子が好みなんだって。だからアンタも伸ばしてんの?」
「そんなことしても無駄だっつーの!身の程を知れよ!」
女子の一人がリエの髪を掴み
無情にもクナイでそれをバッサリ切り落とした。
「ちょっと!何してんのよあんた達!!」
私が飛び出すと、慌てて女子達は逃げていった。
風に乗って、切られたリエの髪の毛が飛んでいく。
「……リエ……」
背中まであったサラサラの髪の毛が、今はもう肩につかない程になっていた。
切り口もずたずたで、長さもバラバラ。
お世辞にも綺麗だとは言えなかった。
「……いのちゃん、ありがと。いのちゃんが来てくれたおかげでこの程度で済んだよ」
「この程度って…何言ってるのよ!もしかしてあんた、ずっとこんなことされてたの?!なんで何も言わないのよ!」
私がそう怒鳴るも、リエは「ごめんね」と笑っただけだった。
なんでこの状況で笑っていられるのか、私には全然理解出来なかった。
悔しくて、腹が立った。
あの女子達にも、
あんなことをされても平然としているリエにも
…もっと早く止められたはずなのに、何も出来なかった自分にも。