第2章 わたしの好きな人【山中いの】
「ったく、母さんも人使い荒いわよね~」
とある日の夕暮れ時だった。
花の宅配に自分を借り出された文句を言いながら里を歩いていると、偶然サスケくんを見かけた。
サクラもいないし、今がチャンス!
なんて、サスケくんに駆け寄ろうとしたら
サスケくんの隣で、リエが笑顔を覗かせているのに気が付いて。
買い物袋を持って仲良く歩く二人に、声がかけられなかった。
あんなサスケくんの柔らかい表情、見たことなかったから。
そのとき私は、サスケくんはもしかしたらリエのことが好きなんじゃないかと直感した。
結構当たる、女の勘。
まぁ、それだけで私のサスケくんへの恋心が冷めることはなかったけれど。
それから、しばらくしてのことだった。
くノ一クラスだけで放課後に校舎の掃除をするように先生に言われて
イヤイヤだったけど皆で頑張って、さぁ帰ろうかな〜なんて思ってたんだけど。
「あんたウザイのよ!忍術も使えない出来損ないのくせに、サスケくんと馴れ馴れしくして!」
アカデミーの校舎裏でそんな怒鳴り声が聞こえきた。
「前にも言ったよね?サスケくんに近づくなって。あんたみたいのがサスケくんの周りチョロチョロして、サスケくんが迷惑してるってわかんないの?」
「こいつ…私達の言ってること理解出来ないくらいバカなんじゃない?」
「やめなよ〜そんな本当のこと言ったらかわいそうじゃん!」
女子の悪態と、下卑た笑い。
これって、どう考えてもイジメじゃない。
私が慌ててそこに向かうと、気の強そうな女子三人が一人の少女を囲っていた。
真ん中にいたのは…リエだった。