そしてこの道が続いたら【Mr.FULLSWING】
第2章 犬飼サイド
「にしても辰、お前どうやって2週間もあいつらを足止めしてんだ?」
「えっ!?」
・・・気のせいか?辰の体が飛び上がったように見えたんだが。
「そ、そんなに難しいことじゃないですよ?」
「俺にはそう思えねえが。」
2週間前、突然辰が「××さんと2人きりにして差し上げましょう。」って言い出した時も驚いたが。
それを今までの間、ずっと有言実行出来てしまっている事実に俺は心底驚いている。
いつも一緒に帰っていた野球部の連中はいい。
辰の呼びかけで、本屋に寄るだの、買い食いに行くだの、どこかしら別行動にしてくれている。
問題はあの親衛隊の奴らで。
あいつら、部活帰りも3日に1回は押し掛けてきやがる。マジどうにかしてほしい。
それを辰はこの2週間、どうしてるのか知らねえが押さえ込んでるわけで。
あの数をとても1人で相手出来るとは思えねえ。
つーか出来るなら昼休みもどうにかしてくれよ。
「企業秘密ってやつですよ。私の頭をなめないでください。」
・・・まぁ辰の頭なら出来そうな気がしなくもない。
お前がそう言うならいいけどよ。
「とりあえず、こんなこと誰にも言うなよ。」
俺が××に惚れてるなんて知られたら、野球部の奴らにどんだけいじられることか。
もし親衛隊の奴らの耳に入ったら、××がどんな目に遭うことか。
「分かってますよ。だから今日こそ頑張ってくださいね?
私の方もそろそろ限界なんです。お近づきするなら今日しかないですよ?」
辰は忠告すると「すみません、お手洗いに行ってきます。」と教室を出て行った。
・・・限界って言われちまったら仕方ねえな。
俺は覚悟を決めて、放課後××と何を話すかに考えを巡らせた。