そしてこの道が続いたら【Mr.FULLSWING】
第2章 犬飼サイド
「また進展無しですか?」
もはや毎日のお決まりの台詞を、辰は呆れた顔で俺に浴びせる。
俺は何も言えずに食パンをかじってコーヒー牛乳を口を運ぶ。
「せっかく2週間前からお手伝いして差し上げてますのに・・・。」
「とりあえず、うっせーんだよ。」
「うるさいじゃないですよ。」
珍しく強めに言われて少し驚く。
「あなたはもう少し自分に自信を持って女性と接するべきです。
女性が苦手なんていい加減にしてください。そんなにおモテになるのにもったいないですよ。」
んなこと言われても恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ。
だってあいつは・・・××は・・・。
他の奴とは仲良くても俺にだけよそよそしくて。
俺の前では笑顔も見せなくて。
きっと俺は嫌われてるんだろうなって。
俺はどうしたらいいか分かんなくなっちまう。
「何話せばいいんだよ・・・。」
「だからいつも言ってるでしょう?部活のこととかでいいんですよ。
今日のメニューは辛かったとか、いい投球が出来たとか。世間話ってやつですよ。」
すでに何度も言われたことを頭の中で繰り返す。
そう、頭では分かってるつもりなんだ。
でも2人きりにされると・・・頭が真っ白になっちまって話題なんて浮かばねえ。
一瞬何か浮かんでも、こんなこと言ったら変な奴って思われねえかって心配になっちまう。
「猿野君じゃないですけど、ヘタレって言われても文句言えませんよ?」
まさにその通りだと俺はぐうの音も出なかった。