そしてこの道が続いたら【Mr.FULLSWING】
第3章 野球部仲良し1年組
駅に着いて追跡組一同は我が目を疑った。
犬飼はさっさと○○に別れを告げ、呆然とする○○を置いて家路に着いてしまったのだ。
○○は何度か犬飼を追いかけようとするが、結局踵を返して駅構内に足を向ける。
「何やってんだアイツ?」
「なんで帰っちゃうんだよー?」
「××さん!」
辰羅川の呼びかけに○○は足を止め、その顔は心底驚いた表情だった。
「みんな!?えっ、なんで!?」
「えっと・・・実は追跡してたんすよ。」
「○○ちゃん、勝手な事してごめんなさい。」
それぞれが口々に謝罪や事情説明をする中、辰羅川はコホンと咳払いしてそれを止めた。
「××さん、今日こそは告白するとあんなに意気込んでいらっしゃったじゃないですか。」
「あっ・・・。」
黙って俯く○○。
一同はそわそわと次の言葉を待った。
「犬飼君が話しかけてくれて、すごく嬉しくて、今日こそ言ってやるんだ!って決意してた。
でも犬飼君、すぐ帰っちゃって・・・あぁ、あたしの独り相撲なんだなって思っちゃったの。」
あぁもう!そんなことないのに!
アイツは照れてるだけだよ!
好きだって言えばいいだけなのに!
お前ら誰が見ても両思いなのに!
どうしてこうも鈍いんだよ!
なんで2人ともこんなに奥手なんだ!
結果を知っている面々にとって、○○の考えはただただ歯がゆいだけだった。