そしてこの道が続いたら【Mr.FULLSWING】
第3章 野球部仲良し1年組
犬飼と○○の50メートルほど後方。
野球部仲良し1年組は、電柱の影や塀の裏から、こっそりこっそり2人を追跡していた。
もちろん部活終了時の連携は嘘であり、追跡していることは○○でさえ知らされていない。
「うーわっ。コゲ犬の野郎、コゲてる上に真っ赤だぜ?」
「そんなに照れるようなこと喋ったんすかね?」
「世間話でもしなさいと言ったのですがねぇ?」
ちなみに2人が両思いなことは、メンバーにはすでに周知の事実である。
「私がわざわざ進言しなくても、犬飼君が○○さんに好意を寄せている事は皆様とっくにお気付きでしょう?」
そうさらりと言ってのけた辰羅川に猿野だけが驚いたのが、2週間前の放課後、2人が帰った後だった。
「えっ!?お前ら知ってたわけ!?」
「当たり前っすよ。」
「兄ちゃん馬鹿じゃないの?司馬君も気付いてたよ。」
「あんだけ犬飼に突っかかってるくせに気付かねえのかよ。」
「犬猿の仲だからって相手を見てなさすぎかも・・・。」
「猿野さん、意外と鈍いんですね。」
「そ、そんな笑わないでくださいよ!凪すわーん!」
犬飼の心配は全くの無意味で、ここだけでなく野球部のメンバーは大体が気付いていたということだ。
というより、気付いていた人間全員が「お前らさっさとくっつけ。」と思っていたわけで。
そんなこんなで、辰羅川の指揮の下「犬飼と○○を引っ付けちゃおうぜ作戦」が決行されることになった。