第4章 夕飯
「そうなのよ、この子達ニートなの。もう立派に成人してるのにね。」
このお母さん、あっけらかんと言うんだな。おおらかな方だな。
まあ、人は色々と事情があるからな。
「さ、早くご飯食べよ♡」
「ゆっくり寛いでくれ、まつふぃーぬ。」
居間へと通されようとした時、おばさんが「お家の方には連絡してあるの?」と聞いてきた。予想はしてたが、連絡したくないんだよな。
でも、おばさんは笑顔で「家の電話使ってちょうだいね!」と受話器を差し出してくれる。
「すみません、ありがとうございます。」
黒電話、初めて使うよ。
「あの、すみません。これ、どうやって掛ければいいですか?」
「まつふぃーぬちゃん使い方知らないの!?」
「さすが、高校生・・・!」
「そもそも、それが何だか知らないんじゃない。」
一松さん、いくらなんでも黒電話ぐらいは知ってます。
チョロ松さんが丁寧に教えてくれる。
「数字の穴に指をひっかけて、時計回りに回すんだよ。0から始まる番号なら、0にかけて・・・そうそう、それでいいよ。」
「あざっス。」
受話器の向うでコール音がなる。
「もしもし。」
オカーサンの声だ。
「あの、まつふぃーぬですけど。今日、夕飯いらないんで。」
「まつふぃーぬちゃん!?どこにいるの?なかなか帰らないから心配してたのよ!携帯にかけても繋がらないし!」
「すいません。今、友達ん家なんで。夕飯ご馳走になったら、ちゃんと帰るんで。」
「お友達?どなた?」
あー、面倒くせー。オカーサンは悪い人じゃないし心配してくれてるのも分かるけど、面倒くせー。
「そんなヤツほっとけ!!」
後ろで親父が怒鳴ってるのが聞える。うるせえよハゲ。