第10章 六つ子が来た日
昼過ぎに、親父はわざとらしく大きな声で「仕事に行ってくる。今日は泊まりだ。」とオカーサンに言っている。
はいはい、女の所だろ。
親父が出ていった後、台所へ行く。
びっくりした。オカーサンが鼻歌を歌っている。
「あのー、なんか手伝いますか。」
「まあ、まつふぃーぬちゃん!ありがとう!でも、今はまだ大丈夫よ。」
オカーサンがニコニコしてる。
いつも悲しそうで怯えているオカーサン。
「あー・・・友達来るの初めてなんで緊張するっス。」
「まあ・・・そうだったの。でも、一気に6人も来るなんてワクワクするわね。」
「そうっスね。六つ子はびっくりっスわ。」
オカーサンと私とで笑う。
こんな事も初めてだ。
硬くなっていた身体が少しずつほぐれていく気分になった。
「ピンポーン」
あ、皆が来た。