第7章 日曜日 午前10時
「おはよー!」
「おはよっス十四松さん。」
「はい、これまつふぃーぬちゃんのグローブ。」グローブを持っていない私のために、十四松さんはわざわざ用意してくれた。
「すいません、あざっす。」
十四松さんは「僕、あっちから投げるね。」と言って、5メートルほど先へ走っていく。
「じゃあ、投げまーす!」
キャッチボールなんて初めてなので、投げ方がよく分からない。野球の投手を思い出しながら、真似して投げてみる。
投げて分かった。私、下手だ。
ボールは明後日の方向へ行く。
失敗した、と思っていると、十四松さんが驚異的な身体能力を発揮し、見事グローブに球を収める。
「とれたー!」
「すげ・・・」
呆気にとられる。なんか腕伸びた?錯覚?
「投げるよ!」
ボールが柔らかく、ぽーんと飛んでくる。
頭の上で拝むように構えていたグローブにすぽっと入る。狙って投げたみたいだ。
「十四松さん、めちゃくちゃ上手いっスね!」
「ありがとー!」
今度は十四松さんの真似をして、軽く腕を振ってみる。
さっきよりはマシか?
またも十四松さんが上手に取る。
そして、上手に私のグローブへ入れる。
何度もそれを繰り返す。
「まつふぃーぬちゃん、どんどん良くなるよ!」
「そっすか?あざーす!」
キャッチボールをしていると、ボールに集中して、他のことを忘れる。
カラ松が来るまで、すっかり夢中になっていた。