第6章 迎え
「お前なあー、ほどほどにしろよー。お前の家が複雑なのは知ってるが、家庭が複雑なのはお前だけじゃないんだぞー。今井だって高橋だって、大変なんだ。鈴木なんか施設から通ってるんだぞー。それで学年トップだ。お前も見習えよー。」
「そうスね。サーセンした。失礼します。」
思いっきり職員室の戸を音を立てて閉めてやる。
あの先公は一番ムカつく。ムカつき具合では親父といい勝負だな。
教室へ戻ろうとすると、用務員のおじいさんが廊下の隅で作業をしているのに気付いた。
用務員さんと目が合う。にこりと笑ってくれる。
「何してるんスか?」
「ここの教室の暖房器具が調子悪くてね。パイプの一部が廊下に出てるんだけど、どうもこれが原因みたいで。」
「そういうの直せるんスか?」
「うん、この程度なら直せるよ。」
「すげー。」
「ははは、ありがとう。」
用務員さんはニコニコしながら手を動かしている。
「もうすぐ授業始まるよ?いいのかい?」
「あ、そっすね。戻ります。頑張って下さい。」
「ありがとう。君も頑張るんだよ。」
いいな、用務員さん。ああいう人が先生ならいいのに。
教室へ戻り、席に着く。
早く学校が終わらないかな。