第5章 クリスマスor正月【虎太/勝呂/黒子】
【黒子のバスケ/黒子テツヤ編】
「彩條さん、おはようございます」
『……あ、テツくん……おはよう』
「今年もよろしくお願いします」
『……ぅん……よろしくね』
「?」
僕は同じクラスの彩條さんに、片想い(?)というものをしています。
この気持ちが恋なのかハッキリ分からないけど、僕はいつも練習を見に来てくれている彼女を、いつの間にか目で追う様になっていた。
僕が教室に入ると一番に駆け寄って来て笑顔で挨拶をし、僕の前ではいつもニコニコと笑顔を絶やさないでいてくれた。
年が明けて学校で彩條さんを見掛けたので声を掛けたが、僕に初めて暗い顔を見せて来た。
僕を見て若干泣きそうになっていたが、軽く笑みを浮かべて挨拶をすると校舎に入って行ってしまう。
「えっと……彩條さん、何かあったんですか?」
『えっ……何で?』
「元気がない様なので」
『だ、大丈夫!ごめんね?心配させちゃって』
「悩み事があるなら聞きますよ?」
『……っ……』
気になって後を付いて行った僕は昇降口で彩條さんに近付き、僕なんかで良ければ話しを聞こうと思いました。
それで相手がいつもの様に可愛らしい笑顔を見せてくれるなら、力不足でしょうが何もしないでいる事は出来ません。
『私ね、お正月に友達と初詣に行ったの……そしたらおみくじ凶だったからっ……』
「彩條さんはおみくじを信じてるんですね?」
『占いとかはあまり信じないけど、ああいうのはやっぱり神様だから違うと思うし……っ……それに今は叶えたい事があったから……』
彩條さんは自分の両手を握り締めて震えた声で必死に言葉を紡ぎ、僕に話してくれていますが、話している内に彼女の目尻から徐々に涙が溢れて来る。
『待ち人来ない、恋も叶わないって……おみくじだからなんか……凄く……辛くてっ』
「……彩條さん」
彼女の好きな人が誰なのか僕は知りません。
でも好きな人が泣いているなら、僕はその悲しみを取り除いてあげたい。
僕は彩條さんに対する自分の気持ちを押し殺し、財布から綺麗に包んだ一枚のおみくじを出して、それを彼女の目の前に差し出す。