第5章 クリスマスor正月【虎太/勝呂/黒子】
自分の優しさが逆に相手を傷付け、より一層泣かせてしまった事に罪悪感を感じると、僕は彩條さんの顔を見れず暗い顔をして俯く。
すると僕の手に温もりを感じ、不意に何かを持たせられる。
『それ、私が買った恋愛成就の御守りなの……交換して?』
「はい、良いですよ……もう叶ってますけど」
『テツくんのが欲しいの!御守りは人から貰った方が御利益あるんだって……だからもっともっと好きになって欲しいの!』
「はい、これからもよろしくお願いします」
『よろしくお願いします!』
漸く僕の好きな笑顔を見せてくれた彼女を優しく引き寄せると、小さくて柔らかそうな唇に自分の唇を軽く触れさせる。
彩條さんは驚いた顔をした後に、ポっと頬を赤らめて恥ずかしそうに俯くが、また僕を見て嬉しそうに微笑んでくれる。
『テツくんにもう一つ買ったのよ!必勝祈願の御守り!……WCは終わっちゃったけど、まだまだ色んな試合に勝てる様に!』
「……?……はい、ありがとうございます。大事にします」
『へへっ』
「黒子?……お前、子供でも出来んのか?」
「必勝祈願だそうです」
「安産祈願だろ!それ!」
「良いんです。安産祈願って書いてありますが必勝祈願なんです」
「はぁ!?」
僕が部活で使っているスポーツバッグに付けている御守りを見た小金井先輩が、僕の言葉に意味が解らないとでもいう様な顔で驚いている。
「小金井先輩、それは彼女から貰ったんスよ」
「えっ、誰の?」
「黒子の」
「「「えぇー!?」」」
その場にいる全員が火神くんの言葉に驚愕し問い詰められそうだったので、僕は自ら影を薄めて隠れる事にした。
バッグにぶら下がっている御守りを目にすると、自然と笑みが零れてしまう。
彼女のちょっとした失敗。
それが可愛くて微笑ましくて、僕は心の中で
(頑張ります)
と呟けばどんな試合にも勝てる気がする。
ずっとずっと僕の好きな笑顔を、絶やさないでいてくれたら嬉しいです。
勿論、他の誰でもない僕の隣だけで……
END