第5章 クリスマスor正月【虎太/勝呂/黒子】
「これ貰って下さい」
『?』
差し出したおみくじを不思議そうに見ながらも、彩條さんはそれを手に取り中身を見る。
すると驚いて突き返えされてしまう。
『これ大吉……テツくんのなんでしょ?貰えないよ』
「それは恋が実るそうですから貰って下さい……それとこれも」
僕は彩條さんが差し出して来たおみくじの上に、恋愛成就の御守りを乗せてそれも渡す。
目の前の貴女を想って買った御守りで、僕とそういう関係になってくれたらと思っていましたが、泣かれるよりずっと良いです。
貴女が笑ってくれるなら……
彩條さんの横を通って教室に向かおうとした僕を、彼女は服を掴んで止める。
振り返ると彩條さんは更に泣いて、僕に不服そうな表情を見せている。
『テツくんがこんな事するなんて酷い!……私はテツくんが好きなのにっ……』
「えっ……」
『他の人だと思ったんでしょ?それを好きな人に応援されたら……何とも思ってないって、眼中にないんだってッ……言われてる見たいじゃない……』
「すみません、彩條さん」
喜ばせるどころか余計に傷付けてしまった事を理解した僕は、彩條さんの手を掴んで入って来た昇降口を出て行くと、人に見られない様にと二人っきりになれる場所に移動する。
「すみません、彩條さん……無神経な事をしてしまいました」
『やだ!もう謝らないで!……テツくんの気持ちは解ったからっ……』
「いいえ、解ってません……僕も貴女が好きですから」
『えっ……嘘』
「嘘じゃありません。その御守りは僕が貴女を想って買ったんです……こんな僕ですが彩條さんと結ばれたら良いなっと……」
『じゃあ、何でこんな事っ』
「彩條さんの涙を止めたくて……僕は貴女の笑顔がとても好きなんです」
『……テツくん』
「彩條さんが僕を好きなんだと気付かなくて、余計悲しませてしまいました……すみません」