第4章 クリスマスor正月【岳人/長太郎/跡部】
「ダンスの練習だって一度も俺のところに来ねぇし、誘ったの俺なのに他の奴と踊ろうとしやがって!何とも思ってねぇ女に金と時間掛ける程俺様は暇じゃねぇんだよ!」
『景ちゃんはいーっつも肝心な事言わないじゃん!庶民だ何だってバカにしてる人の気持ちなんて知らないよ!』
「馬鹿にしてんのはお前だろ!どんだけ鈍いんだよ!」
『……っ……』
「い゛!?」
私は景ちゃんの言葉に腹が立って、ヒールで思いっ切り彼の足の甲を踏み付け走って逃げる。
これは夢だって
シンデレラとかのおとぎ話なんだって自分に言い聞かせる。
だって景ちゃんが私を好きになるなんて思えないもん。
本気で嫌われてはいないのは分かってるけど、恋とかの意味で好かれているなんて思えない。
私はこの気持ちを景ちゃんには絶対に言わないで置こうとしてたのにっ……
「悠鬼!待ちやがれー!」
『!?』
少しの間廊下を走っていると、後ろから物凄い形相で追い掛けて来る景ちゃんの姿があった。
私は慌てて更にスピードを上げるけど、直ぐに追い付かれて手を掴まれてしまう。
『放してよ!私帰るから!』
「ふざけんな!あのまま帰らせる訳ねぇだろが!……こっち来いよ!」
『やだ!放してってば!』
手を引っ張られて側にあった一室に連れ込まれそうになったので、入れられない様に必死に逆方向へと反抗的な態度を取った私だが、流石に敵わずその部屋に入れられてしまう。
『景ちゃ!……んっ……ふぁ……』
扉を閉めて鍵を掛けられると私の背中を壁に押し付けられ、その後唇に柔らかい感触が来る。
それが彼の唇だと気付くのに少し時間が掛かり、理解した瞬間一気に気が抜けた様に私の目尻からポロポロと涙が溢れて来て、夢じゃないんだという事を自覚する。
景ちゃんが一旦顔を離すと私を見つめて、それから何度も何度も触れるだけの優しいキスをしてくれた。
『んっ……景ちゃ……ん』
「聞かせろよ、お前の気持ち」
『……』
「本気で嫌なら殴るなり出来るだろ?……例え今フッてもお前は必ず俺様のものにするけどな」
『私は一般家庭の庶民で普通の女の子だよ?景ちゃんに私じゃダメだよ……ここに来て余計感じちゃった、私と景ちゃんは対等じゃないって』