第1章 バレンタインデー【ブン太/跡部/岳人】
【テニスの王子様/跡部景吾編】
今日は2月14日、バレンタインデー。
女の子が好きな男の子にチョコを渡す日。
しかし、本命以外にも義理チョコや友チョコ等々、色んな意味を込めて渡す人もいる。
そんな中で私も氷帝学園中等部の男子テニス部レギュラー陣に、手作りのチョコを持って来ました。
『はい、皆受け取って!』
「全員分、作って来たん?」
『うん!……へへ、高い物じゃないけど……味は大丈夫だと思うよ?』
「別に値段なんか気にしねぇよ、こういうのは気持ちだろ?」
「俺、悠鬼ちゃんから貰えるのが一番嬉C~」
「お、俺も!悠鬼からが一番嬉しいぜ!」
『ありがとう!亮ちゃん、慈郎ちゃん、岳ちゃん!……そう言って貰えると作った甲斐があるよ!』
三人の嘘偽りのない言葉が、渡した私自身も嬉しくて綻んでしまう。
特に慈郎ちゃんと岳ちゃんには、癒されて悶えちゃうよー!
「悠鬼先輩っ……あ、ありがとうございます!」
『いいえ、大した物じゃないけど……長ちゃんもいっぱい貰ったね?モテモテ!』
「そ、そんな事ないです!……えっと、ホワイトデーちゃんとお返ししますからっ」
『ありがとう!でも見返りが欲しくてあげてる訳じゃないから、気楽に受け取ってよ?』
「俺が悠鬼先輩にあげたいだけですっ」
『長ちゃん、可愛い~!』
「……っ……」
勇気を振り絞って必死に気持ちを言葉にしてくれる長ちゃんが可愛くて、私は背伸びをして彼の首に抱き付く。
忽ち長ちゃんの顔は真っ赤になり、抱き締め返す事等出来ずにあたふたして居るのが分かる。
可愛いからついつい意地悪したくなっちゃう!
ふふ、悪い先輩ねぇ!
「彩條先輩、取り込み中すみません」
『ん?ひよちゃん、何?』
「あれ、良いんですか?」
長ちゃんをからかって居た私に、ひよちゃんは静かに声を掛けて指を差す。
彼が指を差した方向へ私は視線を向けて苦笑いを浮かべる。
その人はソファーに深く座って、偉そうに脚と腕を組みながらこちらを鋭く睨んでいる。