第1章 バレンタインデー【ブン太/跡部/岳人】
悠鬼はまだ言い分がある見たいで、俺の言葉に素直に首を縦に振らない。
困った様に言葉を探す悠鬼をグイッと引き寄せると、俺の膝の上に座らせる。
『ぶ、ブン太!?』
「他の奴のはあるのに、俺の名前は見当たらなかったなぁ?」
『ブン太のは今から別で作るのっ……ハート型のチョコケーキ!』
膝の上に乗った悠鬼は、恥ずかしそうに顔を真っ赤に染める。
至近距離で意地悪に問い掛けると、慌てて俺に材料や道具を見せ始める。
その姿が可愛くて俺は彼女の火照った頬にキスを落とす。
『……っ……ブン太ッ』
「お前は俺のだけ作れば良いんだよ、悠鬼の本命は俺だろい?」
『そうだけど……』
「言っとくけど、悠鬼が何回作ってもお前が作った物は、全部俺が食うからな。誰にやる物でも……」
『!?……ブン太、ヤキモチ妬いてるの?』
悠鬼は自分の頬を押さえながら、そっと小さく聞いて来る。
その発言に俺は不服そうな顔を見せ、彼女の額にデコピンを喰らわせる。
「彼女になったからって自惚れるなよ、こんなんで俺が妬く訳ねぇだろい?……俺を妬かせたいなら、飽きさせないようにしろよ悠鬼」
『……っ……うん、ブン太……大好き!』
「知ってる……お前は俺から離れられねぇんだからな」
悠鬼から甘い口付けを貰った俺。
俺が妬いてたなんて、格好悪くて言える訳ないだろい?
いつも俺にだけ向けられる愛情が、バレンタインデーだからって他の男に向けられたら面白くねぇだろ。
例え義理でもだ……
お前は俺だけ見てればそれで良い。
お前の目に映るのは、いつだって俺一人だ。
良いな?
悠鬼の手作りの愛、全部受け止めてやるよ。
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