第4章 クリスマスor正月【岳人/長太郎/跡部】
それからクリスマス前日。
「納得いかねぇ……」
「何がや?」
「何で一度も俺に習いに来ねぇんだよ……お前等には教わってやがるのにッ」
「それは跡部が意地悪言うからやろ?なのに本人に習いに行く訳ないで……跡部なら尚更やな」
「……っ……チッ……」
「意地張っとらんで当日、悠鬼ちゃん誘いに言ったらえぇやろ?……因みに教えた俺等と慈郎と日吉は悠鬼ちゃんの方から誘われとるで?」
「なっ!?……ふざけんなよ、そんな事許す訳ねぇだろ」
「でも俺も女の子の誘いを断るなんて出来へんって、悠鬼ちゃん相手なら尚更や……文句あるなら本人に言い」
生徒会室で忍足と話した後、相手はそう言葉を残して去って行き、跡部も続いて出て行くと今まで悠鬼達が練習に使っていた部屋へと向かう。
『う~んっと……こうして……景ちゃん、何?』
「……」
壁一面に貼られた鏡の前で一人ポーズを取って足の動きを確認していた私は、鏡越しに入口で腕を組んで私を見ている景ちゃんを視界に入れる。
相手はいつも通り偉そうな態度で無表情のまま私を凝視しているので、私は怪訝な顔をしてもう一度要件を聞く。
『何よ~……ご不満でもありますか?跡部様』
「何でお前はいちいち勘に触る言い方しか出来ねぇんだよ」
『景ちゃんはお顔にも態度にも言葉にも出てるよ……って言うか明日まで景ちゃんには見せたくないんだから出てってよー!』
「アーン?本番になってお前が恥を掻かねぇように態々見に来てやったんだろうが……なのに何で俺には見せたくねぇんだよ」
『だって、出来なかったらバカにするじゃん……庶民の私には大した事は出来ませんよー』
「本気でやってる奴を馬鹿になんかしねぇよ」
『えっ』
今まで一度も景ちゃんに練習を見て貰わなかった理由を、私は彼の顔を見ながら言う事なんて出来ないでいた。
景ちゃん相手に弱音を吐いて、情けない姿なんか見せたくないの。
私と景ちゃんは部長とマネージャーの関係で、普通の一般家庭の庶民とお金持ちのボンボン。
氷帝にいる他の女の子よりは仲良くなったと思うけど、自信なんてある訳ないじゃん。
偉そうでナルシストで凄いムカつくけど、それでも景ちゃんの影響力って強いんだよね。
約二年半も傍で見て来たんだもん、嫌でも思い知るよ……
痛い程に……