第4章 クリスマスor正月【岳人/長太郎/跡部】
悠鬼が長太郎の方を向くと、相手は自分と反対方向を向いて顔を見せない様にしているが、泣きそうになっているのが悠鬼にも分かってしまう。
「すみません、イルミネーションも観覧車も見に行けなくてっ」
『もう謝らなくて良いから』
「もっと悠鬼先輩と居たかったです……折角来て貰ったのに家まで送れなくてすみません」
『私なら大丈夫だよ?……ちょっと残念だけど楽しかったし!』
「……っ……はい、俺も楽しかったです……でも来年は先輩いないのにっ…」
『?……えぇー!もう誘ってくれないのー?』
「!?」
『?』
長太郎の言葉を聞いて今回が最後だという様に言われてしまえば、悠鬼は驚いた様にあからさまに残念そうな表情を見せる。
悠鬼の表情と言葉に長太郎の方も驚きを隠せないでいると、相手は傍にある椅子に座って不服そうにしながら口を開く。
『卒業したらもう誘ってくれないの?……来月はお正月もあるしバレンタインデーもあるしー、ホワイトデーもあるし……一周してまたクリスマスは来るよ?』
「……っ……悠鬼先輩……それって」
『だから私はっ「待って下さい!」』
「俺が言いますっ……俺から言わせて下さい」
『うん!』
先輩の言葉を遮り、勢い良く起き上がる俺。
先輩は既に俺の言いたい事を察しているのか、期待の眼差しでニコニコしながらジっと見つめて来る。
自分では見えないので分からないけれど、俺の顔はデートに誘った時よりも緊張して真っ赤になっているだろう。
先輩の顔には『早く!早く!』と書かれている様に見え、益々恥ずかしさを覚えカァーっと耳まで熱が来る。
一方の悠鬼は長太郎の様子がとっても可愛く思え、少々悪戯っ子の様な無邪気な笑みを浮かべて凝視している。
「俺は!……っ……悠鬼先輩がずっと好きですッ……俺の彼女になって下さい!」
長太郎が意を決して口を開き漸く告白してくれたところで、悠鬼は彼の首に抱き付いてちゅっと唇に触れるだけのキスをする。
『私も長ちゃんが大好きよ!』
「……っ……は、はい……」
長太郎の脳内はそれで一杯一杯になってしまい、そのままパタンと倒れて気絶してしまった。
起きたら夢じゃありませんように……
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