第4章 クリスマスor正月【岳人/長太郎/跡部】
【テニスの王子様/鳳長太郎編】
「今年こそは先輩を誘おう!」
冬休みに入る数日前の事。
長太郎は自分が片想いをして居り部活の先輩である悠鬼をクリスマスのデートに誘おうと、拳を握って意気込んでいた。
部活のジャージに着替え終わった頃、悠鬼が洗濯籠を持って部室に入って来る。
今は二人っきりで邪魔者は誰も居ない、絶好のチャンスとばかりに長太郎は悠鬼に近付いて行く。
「あ、あの!悠鬼先輩!」
『長ちゃん、どうしたの?』
「えっと……そのっ……」
『ん?』
数日前から何度も誘いの言葉を考えていた長太郎だが、いざ本人を目の前にするとスッと言葉が出て来なくなり、口をパクパクさせて焦り出す。
首を傾げじっと見つめて何を言おうとしているのか、言葉を待ってくれている先輩。
長太郎は顔を真っ赤にしながらも、必死に言葉を紡ごうと口を開く。
「お、俺とクリスマス一緒に過ごして下さい!」
『クリスマス?……でも学園でパーティーやるよね?』
「それじゃなくて俺とデートして下さい!24日でも25日でも先輩の都合の良い日で構いません!」
『ふふっ、長ちゃんから誘ってくれると思わなかったよ』
「……っ……もう先約いるんですか?」
『ううん!まだ誘われてないよ!……私もどっちでも良いけど、じゃあ24日にする?』
「はい!ありがとうございます!」
そしてクリスマス当日。
「長太郎!何処行くの?」
「……ゲホッゲホッ……ちょっと出掛けて来るっ」
「ダメに決まってるじゃない!こんなに熱出してるのに」
「今日は絶対行かないといけないんだ!」
悠鬼とやっとデート出来るという日に、長太郎は37.8分という熱を出してしまった。
長太郎自身、今日は本当に楽しみにしていたし、悠鬼相手にドタキャン等出来る筈もないので、母の言葉を無視して長太郎は待ち合わせの駅へと急いで向かう。
「せ、先輩!すみません、お待たせしてっ……」
『大丈夫よ、長ちゃん!……風邪引いたの?』
「いえ、少し風邪気味ですけど大丈夫です」
『そう……無理しないでね?』
「……っ……はい」
長太郎はマスクをしているので赤い顔は隠せているが、ただの風邪気味と余裕の顔を見せて悠鬼に悟られない様にする。