第3章 バレンタインデー【一角/狛村】
【BLEACH/狛村左陣編】
『ねぇ、一護ちゃん!犬ってチョコ食べられないの?』
「あ?……まぁ、犬猫は食べたら腹壊すかもな」
『!?』
現世任務に来た彩條 悠鬼は、何故だか一護の部屋で寛ぎ【いぬのきもち】という雑誌を読んでいた。
自分の質問に答えてくれた一護を、悠鬼は少し泣きそうな顔で見上げる。
「なっ、何だよ!?……犬にチョコあげたいのか?」
『……狛村隊長っ』
「………狛村さんなら大丈夫だ、安心して渡せよ」
悠鬼の渡したい相手を聞いた一護は、少し冷めた様な目をして暫く間を開けた後、ハッキリ大丈夫だと告げる。
『でも!狛村隊長が私の作ったチョコでお腹を壊されたらどうするの!!』
「狛村さんはそんな柔じゃねぇから大丈夫だって!……おら!分かったら尸魂界に帰れ!」
『きゃ!?……もう、恋する乙女の真剣な悩みなのに……』
一護によって強制的に部屋を追い出されてしまった悠鬼は、直属の上司である狛村に告白する決心を付け、尸魂界へと帰って行く。
手作りのチョコを用意して、隊舎にある隊首室を訪れた悠鬼。
しかし中々扉を開けられず、部屋の前をウロウロしているだけ。
戦いの場と違い、普段の彼女は優柔不断である。
「悠鬼、どうした?入って来い」
『ひゃ!?……は、はいっ……』
霊圧で察したのか、扉越しに声を掛けてやる狛村。
不意に声が聞こえて驚いてしまった悠鬼は、慌てて口を押さえ恐る恐る扉を開ける。
中に居る狛村と目が合い、相手は軽く笑みを見せてくれる。
「儂に何か用か?」
『……っ……これを受け取って下さい!』
「これは何だ?」
『私は狛村隊長をお慕い申し上げて居ります!……今日、現世ではバレンタインデーという日でっ』
悠鬼は狛村に綺麗にラッピングしたチョコを差し出しながら、バレンタインデーの事を説明する。
それを聞いた狛村はゆっくり目を閉じて、相手の差し出す箱を受け取らずに口を開く。