第3章 バレンタインデー【一角/狛村】
一角がこんな事に興味がないのは、長年傍にいる悠鬼も承知済み。
しかし、彼と甘い時間を過ごしたい一心の悠鬼は、一角の唇に優しく口付けを落とす。
顔を離して一角と目を合わせると、悠鬼は少し拗ねた様な表情を見せる。
『今更だって良いじゃない、私が一角を愛する気持ちは変わらないんだから』
「チッ……勝手にしろよ」
『……っ……迷惑なら迷惑って言えば良いじゃない』
「あ゛?誰もんな事言ってねぇだろ」
『だって……投げやりに言うからっ……嫌なんでしょ?こういうのに付き合うの……』
話していると悠鬼の顔は、どんどん暗くなって行く。
普段は堂々としていて凛としている彼女だが、一角の一言でたまに内気になってしまう事もある。
一角ははぁ~っと呆れたように溜め息を吐き、少し言いにくそうに口を開く。
「悠鬼、一度しか言わねぇからちゃんと聞けよ?」
『えっ……いやぁ!別れるなんて言わないで!』
「言わねぇよ!人の話をちゃんと聞けって!……好きだから迷惑じゃねぇよ」
一角が急に真面目な顔をするので、悠鬼はてっきり別れ話をされるのかと、慌てて泣きそうな顔を見せる。
しかし、滅多にというか告白された時以来、一角から愛の言葉を貰った事がないので、悠鬼は一瞬で愛しそうな微笑みを見せる。
照れて横を向いてしまった一角の耳にそっと口を近付け……
『私も愛してます、一角』
「……っ……お前なぁ……」
頬にちゅっとキスをすると、一角の顔は一気に頭まで真っ赤になってしまう。
一角は起き上がると、悠鬼の顎を掴んで引き寄せ彼女の唇を奪う。
強引だけどその時のキスは、とても優しくて愛しいものだった。
まるで初めてしてくれた時の様に、恥ずかしくって照れ臭いけど幸せな時間になった。
「一角、あんたチョコ貰ったなら来月返さないといけないのよ?」
「は?」
「一ヶ月後にホワイトデーって言うのがあって、バレンタインデーに貰ったお返しをしなきゃいけないのよ!」
「面倒臭ぇ事考えるな」
『あら、良いのよ!一角はそんな事考えなくて……私が伝えたいからしたんだもの、気にしないで?』
「……悠鬼」
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