第3章 バレンタインデー【一角/狛村】
「それは受け取れんな」
『……っ……』
「儂に貴公は勿体ない、悠鬼の気持ちをこんな儂が受け取る事は出来ん」
『こんななんて、おっしゃらないで下さい!狛村隊長はとても素敵です!……私は心から貴方が好きなんですっ嫌いなら嫌いだとハッキリ振って下さいな!……っ……』
泣くつもり等なかったのに、狛村が目尻を舐めた事で自分が泣いてしまった事に気付いた悠鬼。
かぁーっと恥ずかしそうに顔を赤らめると、真っ直ぐじっと目を見つめられる。
すると悠鬼が持っていた箱を取られてしまう。
『あっ』
「こんな自分が嫌で最近までずっと笠を被っていた。まさか儂にそんな感情抱く者が現れるとはな」
『……狛村隊長』
「悠鬼の想い無駄にはせん……儂もッ……貴公に惚れて居るっ」
『!?……あ、ありがとうございますッ……私も愛しています、狛村隊長』
どちらかともなく、ぎゅっと抱き合う。
悠鬼は狛村の鼻先に、ちゅっと触れる口付けを落とし、愛しそうに柔らかい微笑みを見せる。
彼女は七番隊の四席として、良く働いてくれている。
女性としても部下としても、とても素晴らしい。
本当は獣の姿の儂が、彼女の真剣な気持ちを受け取るのは如何と思う。
しかし儂の傍で笑顔を向けてくれる貴公が、今はずっとずっと愛しい。
儂の全てで貴公を護ろう。
この笑顔を枯らせない様に……
END