第2章 バレンタインデー【黄瀬/緑間/青峰】
【黒子のバスケ/緑間真太郎編】
「なぁ、真ちゃんはチョコ、いくつ貰った?学校で」
「貰ってないのだよ」
「!?……一つも?」
「あぁ」
放課後の部活が終わり彼女の居ない緑間と高尾は、いつも通り自転車でリアカーを引きながら虚しく帰ろうとしていた。
高尾は女子から何個か義理チョコを貰っているが、緑間が一つも貰ってないのには驚いた高尾。
緑間は少し近付きにくい性格なのは分かる。
だが緑間は必ず一つは貰えると思って居たのだ。
(悠鬼ちゃん、忘れたのか?……んな訳ねぇよな)
『真ちゃん』
「何だ?」
『私も乗せて?』
「好きにしろ、運転手は高尾だからな」
『うん、ありがとう』
緑間と高尾の様子を見ていた悠鬼は、そっと姿勢を低くしてリアカーに近付く。
高尾に気付かれない様に、既にリアカーに乗っている緑間へと小さく声を掛ける。
彼から何の躊躇いもなく許可を貰うと、悠鬼は静かにリアカーに乗り込む。
(別にコソコソする必要ないだろう……)と思う緑間だが、敢えて突っ込まずスペースを空けてやる。
悠鬼は緑間の隣に両脚を抱えて座る。
『今日のラッキーアイテム可愛いね?……にゃんこっ』
「そうか?」
『うん、明日になったら頂戴?もう使わないでしょ?』
「やらないのだよ、また同じラッキーアイテムになる日が来るかも知れないからな」
『えぇ~』
緑間の手のひらに乗っている猫のぬいぐるみを見た悠鬼は、その猫を撫でながら何気ない話をする。
猫好きなので残念だったが仕方なく諦める。
普段悠鬼は緑間達と一緒に帰る事はない。
方向が真逆なので、緑間は彼女が何故乗って来たのか疑問に思って居た。
『……真ちゃん!……きゃ!?』
「っ!?」
二人の間に少しの沈黙が出来、悠鬼は意を決して緑間に声を掛け様と口を開ける。
その瞬間、リアカーのタイヤが何かを踏んだらしく、ガタンと大きな音を立てて跳ね上がる。
「ごめん!悠鬼ちゃん、大丈っ……何してんの~?真ちゃん……」
「……うっ……何って……!?」
悠鬼が倒れるのを助け様とした緑間だが、背後から冷たい視線を送る高尾の言葉に状況を理解しようと起き上がる。