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【黒バス:R18】with gratitude

第8章 As if walking slowly(黄瀬涼太)


「ただいま」

寝室を覗いても布団は抜け殻。
リビングに気配がある。

「おかえりなさい。ありがとう。……どうだった?」

「うん、全員が大喜びだったっスわ」

久しぶりにばーばの家に行けた息子も、孫に会えた母親も、甥に会えた姉ちゃん達も大喜びだった。あれで父親まで加わればパーティーくらいの盛り上がりになるだろう。
心配はなさそうだ。

「良かった。涼太も疲れてるのにごめんね。コーヒーでも淹れようか」

「あぁいいっスよ、オレやるから」

そう言ったのに、みわもキッチンへとやって来た。
彼女にも何かさっぱりするお茶でも淹れてあげよう。

「寝てなくて大丈夫なんスか?」

「うん、もう元気だよ。ありがとう」

みわのハーブティーの茶葉をティーポットに入れ、自分用のドリップパックコーヒーのフィルターをマグカップにセットする。

ここの珈琲店のドリップコーヒーは、パックとは思えないほど本格的で、すごくまろやかで飲みやすく、常にストックを置くほどだ。

時間がある時はコーヒーは豆挽くとこから淹れるけど、そうじゃない時はこれで十分。

ケトルで沸かした湯を注いで、コーヒーアロマで癒されながら、少し蒸らして……

「……ぅ、っ」

小さな呻き声と共に、みわが俯いた。

「みわ?」

みわは手で口を押さえたまま、返事もせず走ってリビングを出て行った。
何が起きたか分からないオレも、慌てて追う。

開け放たれた扉は、トイレのもの。
中から、咳き込んでいる声が聞こえる。

「みわ、気持ち悪いんスか?」

どうやら嘔吐してしまったらしい。
上下する小さな背中を、そっと撫でた。

……ん?

オレは、なんかこの状況を知ってる気がする。

あれ?

…………

ん?

もしかして?



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