第6章 Stay Home(黄瀬涼太)
"今日こうして集まって貰ったのは他でもない……"なんて切り口上の挨拶があるわけでもなく、なんとなく世間話をして時間が過ぎるのが意外だった。
近況を語る時に出てくる単語はひとりひとり全く違っていて、みんなそれぞれの道を歩んで、それぞれの人生を生きているのがよく分かる。
お友達みたいに毎日連絡を取り合ったりするわけでもないけれど、こうしてたまに顔を合わせた時に時間の経過を感じさせないのが、彼らの絆の強さなのかなとも思った。
談笑の中、私は軽くご挨拶を済ませてその場を離れた。
皆とお話出来たし、もう十分。
あとは涼太に楽しんでもらえたら。
ソファに横になると、涼太の笑い声が聞こえてくる。
それを聞いているだけで、なんだか元気になる。
流れてくる情報に不安を煽られるばかりで、最近、声を出して笑ったかな。
そんな風に思ってしまう毎日だった。
不安なのは私だけじゃない。
むしろ私なんかは呑気な方だよ。おうちで自粛が出来るんだもの。
世の中にはこの自粛期間に大変な思いをして対応をしているひとが沢山いるし、経営をしているひと達もこの未曾有の事態に、今を乗り切るので精一杯だろう。
経済の悪化は、ひとを殺す。
頭では分かっているけれど、実感として体験していない以上、私が何を言っても対岸の火事だ。
何か出来ることを、なんて言ってるけれど、私はやっぱり無力だな……。
なんだか、瞼が、重い……。
疲れたなんて言える立場じゃないんだから、頑張らないと……。