第6章 Stay Home(黄瀬涼太)
「緑間さんも、こんにちは」
『お久しぶりなのだよ』
「あ、緑間っちやっと聞こえた! さすが高尾っちサポートセンターっスね」
『緑間君はきっとお仕事、大変な時期ですよね』
『ああ……今が正念場なのだよ』
黒子くんがそう声をかけた通り、緑間さんはお医者さんだ。実は詳しくは知らないのだけれど……。
そしてお勤めの病院が感染症の指定病院かどうかも分からないけれど、いつもよりも疲れた顔をしているのを見ると、やはり私には想像つかないくらいの過酷な現場なのだと思う。
『悪いね、緑間。忙しい時に』
『たまには気分転換も必要なのだよ。長くは居られないが』
『今日は30分程度を予定している。都合が悪くなったらいつでも退室して貰って構わないよ』
『ああ』
赤司さんと緑間さんとの会話を聞いていると、なんだか会議みたいだ。
でも画面を覗くと、各々は自由に過ごしている。
不思議な空間に、何故かちょっと和んでしまう。
「もうひとりは紫原っち……っスよね? 誰も映ってないんスけど……」
画面の中に、ひとつだけ誰の気配もない箱がある。
向こう側は確かに部屋のようだけれど、主の姿が見えないのだった。
『はい、紫原君です。さっきは少し映っていたんですけど……あ、戻って来ました』
のそ、と画面端から現れた黒っぽいスウェットの長い足。
抱えていたらしい大きな段ボールを後ろに置いてから、画面へと戻ってきた。
『荷物来てた〜』
「ご無沙汰してます、紫原さん」
『あ〜みわちん、久しぶり〜』
「な、なんかすげえデカい段ボールっスね。家具でも買ったんスか」
本当に大きな箱だ。
座った紫原さんよりも少しだけ小さいくらいの高さ。
何が入ってるんだろう?
『ん〜。詰め合わせがお得だったから注文しただけだし〜』
「詰め合わせ……お菓子、ですか?」
『うん。北海道からだと送料高いから、纏めて買った〜』
在庫を抱えた企業の休業支援ということだろう。
……にしても、纏めて、の規模の違いに驚いている。
賞味期限内に食べ切れるのかな……紫原さんなら、心配ないか。