第6章 Stay Home(黄瀬涼太)
どうにもいたたまれない気持ちになって涼太の方を見ると、彼はにっこり笑って手招きしている。
う、ご、ご挨拶だけ済ませようかな。
どうしようもない夫婦喧嘩エピソードが披露される前に顔を出しておけば良かった。
恐る恐るダイニングテーブルの上のパソコンを覗き込むと、そこには見知った面々が。
「こんにちは。ご無沙汰しております。みわです。ご挨拶が遅れてしまって」
『みわさん、ご無沙汰してます』
画面越しの黒子くんの水色の髪は、背景に映る本棚の影響か、いつもよりも暗い色に見える。
それでも彼は爽やかでどこか儚げで、年月を全く感じさせない。
『みわさん、黄瀬を借りていてすまないね』
「いえ、こちらこそお邪魔してしまってすみません」
花開いたベゴニアのようにふんわりと微笑んでいるのは、赤司さん。
その佇まいというか存在感に、深みが増している。
背には掛け軸と盆栽のようなものが映っている……ご自宅の和室なのかな。
『桃井は今日、仕事だと聞いたけど』
「はい、私も昨日聞きました。残念ですがまたの機会におしゃべりしようねって」
さつきちゃんは、どうしても出なければならないお仕事で今日は終日外出しているのだと聞いた。
体調には気をつけてねって伝えたけれど……。
時期が時期だけに、心配だな。
『よお』
「ご無沙汰してます、青峰さん。今期は難しそうですね」
『ま、今回ばかりはな。しゃーねーだろ』
青峰さんは今もNBAでプレーしている。
けれどこの感染症の影響で、NBAは今シーズンの日程を無期限で停止すると発表した。
ロッカールームの立ち入りすら出来ない状況らしい。
そんな状況もあり、今回一時帰国を決めたんだそうだ。