第2章 unconfident(氷室辰也)
でも、彼から返ってきた言葉は、想像していたどれとも違っていて。
「お世辞なんかじゃないよ。俺はあの時、ステージでキラキラ輝いている君に恋をしたんだ」
まるでテレビドラマのようなその告白に、盛大なドッキリではないのかと辺りを見回したのも束の間、真剣な瞳と目が合ったまま、指の1本すら動かせなくなった。
あの日から、私達は付き合う事になったんだ。
ちなみに、氷室さんとお付き合いを始めて1年と少し……なのに、ふたりの関係はキス止まり。
彼氏が出来るのは初めてだと言ってあるから、多分彼は、経験の無い私の気持ちを大事にしてくれているんだと思う。
でも……私だって、もう子どもじゃない。
彼の全てが欲しいし、彼に全てをあげたい。
そんな事、恥ずかしくて言えないけれど。
氷室さんのお誕生日は、10月30日。
私の誕生日は、11月3日。
数日しか違わないということで、誕生パーティーは合わせて一緒にやろうと彼から提案があった。
2歳歳上の氷室さんは、21歳。
私は今日、19歳になった。
彼とお酒を酌み交わせるようになるまで、あと1年の辛抱だ。
酔ったところとか、見てみたいな。
大体、普段のデートはいつも私の行きたい所について来てくれる。
彼氏だけど、お兄ちゃんのような一面も持ち合わせていて。
そんな彼が、「今年のお誕生日祝いは俺が場所を決めてもいいかな?」と言ってくれた。
嬉しい。
どこに連れて行ってくれるのかな。
とっておきの薄ピンクのワンピースに、肩口から裾に向かって、サテンのリボンが編み込まれたグレーのカーディガンを羽織って、足元は6㎝ヒールのベージュパンプス。
今日は気温も上がるみたいだし、これで十分だろう。
いつもの格好よりは、少し背伸び。
歳上の彼と並んでも恥ずかしくないように。
ヒールを履いても彼の方が背が高いというのが、地味かもしれないけどとにかく嬉しくて。
やっぱり、身長は私の中で大きなコンプレックスだから。