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【黒バス:R18】with gratitude

第2章 unconfident(氷室辰也)


きっかけは、学祭のステージだった。
ダンスが得意な私は、ダンスサークルの皆とステージ発表をしていたんだ。

私達の次にイベントを予定していたバスケ部のメンバーの中に彼は居て、たまたま私達のステージを観ていてくれ、舞台袖へ戻って来た私に声をかけてくれた。

満面の笑みで「so cool!」って。

多分その時、彼は私の名前すら知らなかったと思う。
でも私は知っていた。

彼は、氷室辰也さん。
学内でもかなり有名人。
なぜなら、彼はかなりの美男子……イケメンだから。

妖精のような薄紫色の長い前髪に隠された左目と、右目の下には泣きボクロ。

男の人なのに立ち昇るような色気が半端ないのである。
そして帰国子女というオプションつき。
モテないはずがない。

一見、物静かな印象の彼。
ダンスを褒められたのが嬉しくて、お返しにとバスケ部の出し物を見ていったのだけど……彼の美しいプレーに、目を奪われた。

そして、普段のクールな印象とは異なる、熱い彼がそこには居て。

はい。
そのギャップにころっとやられてしまったのです。

でも、私は学内一の美人とかじゃないし、目立ったところもないし、彼なんかに釣り合うわけないって、諦めてた。
だから、勿論ふたりの関係が進展などする訳もなくて。

彼への想いを胸中の水底に燻らせたまま、次に会ったのは、駅前。

たまたま彼が、前を歩く私に気付いてくれたらしく、声をかけられた。

「どうしたの? 背中を丸めて、元気ないね」って。

私は特に変わった事もなかったんだけど……強いて言えば、この長身が嫌で、背筋を丸めて歩くのは癖だ。
少しでも、小さく可愛く見えるように。

彼に都合の良い嘘は吐きたくなくて、正直に話した。
氷室さんは、私の言葉に目を丸くして、「こんなにcuteなのに、何を言っているんだい?」とサラリと言った。

私は、その言葉に驚いて、思わず泣いてしまった……まさか、好きなひとからそんな風に言って貰えるなんて、思ってもみなくて。

でも同時に、気を遣わせてそんな事を言わせてしまった事が本当に申し訳なくて、ひたすら謝った。

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