第6章 Stay Home(黄瀬涼太)
「そっか、うん、分かった。私……少しソファで休んでるね」
「ん、リョーカイっス」
私はそう告げて、リビングルームの中のソファがある一角へ移動した。
海常の皆は私もチームメイトだったから混ざっても許されたかもしれないけれど、さすがに皆の集まりにはお邪魔出来ないかな。
いや、そんな事を気にするひとたちではないのは分かっているんだけれど、出来るだけ気を遣わせたくないなというのが本音。
私の気持ちを知ってか知らずか、涼太も強く誘うような事はしなかった。
ここにいるより、他の部屋に居た方がいいかな?
そう思ったけれど、それも気にしすぎかもしれない。
お手洗いを済ませてから息子の様子を見に行って、眠りが深そうなことを確認して再びリビングへ戻ってきた。
ティーカップをふたつ出して、紅茶を淹れる。
片方は涼太の居るダイニングテーブルに置いて、私は再びソファへと戻った。
紅茶をひとくち飲んでから、ころりとソファに横たわって吹き抜け部分を見つめていた。
ふとバルコニー側の窓を見たけれど、外の景色は変わらずけぶっていて、雨はまだ止みそうにないのだということを察する。
「もしもーし、聞こえてるっスか?」
『聞こえているよ。皆、久しぶりだね』
「赤司っち、さっきはありがとね」
どうやら通話が開始されたみたい。
学生時代のような涼太の雰囲気に、ホッとする。
出逢った頃を思い出すなぁ……。
『ご無沙汰してます。黄瀬君』
「あ、黒子っちも久しぶりっスね! なんか痩せたんじゃないスか?」
『そうですか? あまり運動出来ていないので、太りました。黄瀬君は変わりませんね』
この声は黒子くんだ。
出産してから一度、うちに遊びに来てくれた。
息子を抱いてくれた時の笑顔は、見ているこっちまで温かくなるような慈愛の微笑みだったなぁ。