第6章 Stay Home(黄瀬涼太)
『お子さんもいるだろうから、長い時間拘束するつもりはないんだが、もし都合がつくならどうかと思ってね』
「うちは大丈夫っスよ。丁度さっきお昼寝始めたトコでまだ起きないと思うし」
くすっと、向こう側で笑い声が。
『すっかり父親だな』
その優しい声に、揶揄う意図はないのだとハッキリ分かる。
中学生の頃から知り合いの彼等だ、きっと思うところがあるんじゃないのかな。
「そっスか? でもオレ全然普段家に居られないっスからね、いい父親とは言えないんスわ」
「そんな事ないよ!」
思わず大きな声で口を挟んでしまってから気がついた。
涼太が目をまん丸にしてこっちを見てる。
そしてその後に、スマートフォンの向こう側から聞こえたのはまた笑い声。
「ごめんなさい……割り込んじゃって。でも涼太は、十分すぎるくらい"父親"なので……」
『みわさん、元気そうで何より。それを聞いて、夫婦仲も問題なさそうで安心したよ。聞こえていたかな、遠隔で集まろうかという話になっているのだけれど』
相変わらずフォローが完璧すぎて、敵わない。
人間が出来たひとが多すぎる……見習わなきゃ。
「はい、こちらは全く問題ありませんので、ぜひ皆さんで楽しんでください」
『ありがとう。30分ほど、時間を頂戴するよ』
そんなに短い時間でいいのかな?
お気遣いなくと伝えて、スマートフォンと距離を取る。
「んじゃ、一旦切るっスね。ルーム出来たら招待して貰っていいスか、うん、じゃ」
涼太のその言葉に合わせて、通話終了のボタンをタップした。
「みわ、ごめん」
「大丈夫だよ。涼太、お腹空いたなら皆とお喋りしながら何か食べる?」
スープもあとは仕上げだけだ、お腹が空いてるなら待たせずに食べてもらえるかも、なんて思ったんだけれども。
「いや、終わってからみわと食べる」
申し訳なさそうに、そう言うから……コンロの火をそっと止めた。